組織の問題(不正やパワハラ)を通報した者が逆に懲戒処分を受けていること
概要
現在紙面を賑わせている兵庫県知事の問題と上層部による不正の調査を求めた教員を懲戒処分にした長野大学の問題はいくつかの点で類似しており、日本社会が向かう悪しき方向として見過ごすことはできません。以下に両者の共通点と異なる点を整理しました。
1.兵庫県知事の文書問題
兵庫県知事のパワハラ(おねだり等)を告発する文書をマスコミなどに流したとして、兵庫県の県民局長が停職3か月の懲戒処分を受けました。この懲戒処分では、告発を受けた兵庫県知事自らが通報者探しを指示し、懲戒処分を急がせたと報道されています。
この県民局長が通報したことに対する懲戒処分は、後に兵庫県議会の百条委員会の調査で、調査に参加している弁護士から公益通報者保護法違反であることが指摘されています。
問題が深刻なのは、知事のパワハラを通報し、懲戒処分を受けた県民局長は自死に追い込まれたことです。さらに、兵庫県知事の言動により、プロ野球阪神・オリックス優勝パレードを担当した職員が自死に追い込まれたとも報道されています。
現在、この兵庫県知事問題は、兵庫県議会による百条委員会で徹底した調査が行われているところです。
2.長野大学問題
長野大学においても、副学長ら長野大学の上層部の会計上の不正を指摘し、学長に調査をするように求めた大勢の教員らが、報復措置として逆に懲戒処分を受けました。
公立大学法人化後、長野大学では実際に不正が発生しており、不正があったことは長野大学の理事長も認めています。
長野大学の場合に不可解なのは、不正の通報がされた翌日には通報された者(不正を行っていた者)に、誰がどのような通報をしていたのかが伝わっており、すぐに通報者に圧力がかけられていることです。
しかも、この通報された者(不正を行った者)は、この不正が通報された後、不正の隠ぺい工作を行うために、さらに不正を重ねています。
また、もう一つ不可解なことは上田市役所の動きです。不正調査を求めた教員らに大学上層部だけでなく、上田市の部長も、長野大学に訪問し不正調査をやめるように圧力をかけた事実があることです(2020年10月9日の録音)。
長野大学においても、以上のことは公益通報者保護法に違反しているのではないかと指摘されています。
2つの問題の共通点
兵庫県知事の文書問題と長野大学問題の共通点は、いずれも組織の上層部あるいはトップのパワハラや不正を指摘・通報した者が、逆に懲戒処分を受けていることです。
また、両者ともに公益通報者保護法が守られていないのではないかとの疑問が指摘されていることも重要な共通点です。
このように兵庫県という自治体、そして上田市が設置者となる公立大学法人といった公的機関の自浄能力が十分に機能していないことが心配されています。
2つの問題で異なる点
兵庫県知事の文書問題と長野大学問題では、特に兵庫県議会と上田市議会との動きの違いが指摘されています。
- 長野大学問題は、上田市議会が完全な沈黙を保っていることが市民から疑問を出されています。多くの市民が声をあげ、さらに市民から市議会に向けた要望が文書として出されているにも関わらず、上田市議会では長野大学の不正問題がまるで無かったかのように市議からの反応がありません。
- 兵庫県知事問題では、兵庫県議会が積極的に動き、百条委員会を設置して徹底した問題の調査を行っているのに対し、長野大学問題では、上田市議会は、市民から多数の要望を受けながらも沈黙を保っています。
上田市民の代表である上田市議会議員が動かないという点は多くの市民からも疑問が出されています。
社会的な問題として
日本社会では、内部告発者が守られないという事例が続出しています。森友学園問題で、安倍首相を守るために財務省が文書改ざんを行った際、それを最末端で担わされた近畿財務局の職員が、文書改ざん作業に耐えきれずに、抗議して自死したのも同じ構図です。東芝やオリンパス光学でも同じ問題が発生しました。日本の代表的な名門企業と言われた東芝に至っては、数年続いた不正経理がたたって、その後の原発買収の失敗と重なり、とうとう株式上場廃止に追い込まれました。これで果たして、日本は法治国家と云えるのか、と思わざるを得ません。