開催報告(全体)
2024年3月20日に「地域と大学を考える in うえだ part2」が上田市西部公民科で開催され、大勢の市民の皆様にご参加いただきました。今回は、「長野大学問題」をテーマに、市民の皆様に具体的な考えを述べてもらうディスカッション形式としました。
市民の皆様には、各グループに分かれて、それぞれのグループの中で自由に討論をしていただき、その内容をまとめました。
この市民の皆様の討論結果は、このWebページでまとめるとともに、公立大学法人長野大学の理事長や上田市長、上田市市議会議長、上田市議会議員全員に文書として提出いたしました。
全体として出されたまとめ
・多様な意見が出た。新たに知ってもらい考えていただいたことが非常に重要だと考えている。中にいるとおかしいことがおかしいと思わずに流されてしまうことがある。目の前にいる学生達に何が起きているのかを知ってもらって一緒に考えることが大事である。市民とも一緒に考えていく大学作りを進めたい。
・いただいた意見は運営委員会で整理して市長・理事長・学長に対して文書を提出していく。市議会にも今後働きかけていきたい。
I.長野大学問題に関する情報共有と市民からの問題提起
1.公立化後の長野大学の問題と「地域と大学を考える会」の活動報告
今回は、話題定期を行った後、市民の皆様が、長野大学をどのように考えているのかを一人ひとりから意見を聞き議論しました。
(1)公立化後に起きたいろいろな問題と訴訟(田中報告)
- 長野大学の教員が次々と懲戒処分されている(今回の報告だけで、62名中5名)
- 大学の問題というだけではなく、地域の問題である長野大学の教育設備や予算が目的外使用され、会計の不正の疑いがあった。不正調査を求めた教員の方が逆に懲戒処分を受けた。
- 大学で起きている不正:たとえば、架空発注
- 内部通報者保護がされない。不正の疑いがあることを内部通報しても、誰がどのような通報をしたのかが、不正の疑いがある本人に直ちに知らされたことから、通報者が全く保護されない。
- 長野大学で発生した不正は、不正が発覚後も隠蔽工作が行われており、かなり悪質であった。
- わかっているだけで被害総額700万円弱の不正(当該職員は停職処分→自己都合退職)
- 不正調査に貢献した教員が懲戒処分になった。しかし、これらの教員には規程上・法令上の違反がない。
- 適切な競争入札をせずに多額の契約をするようになった疑いがある。特定の業者を優遇している疑い。突然、1社指名で導入の契約をされた情報システムであるが、正常に動作せずに深刻な問題が生じた。学生自治会から学長に自体の詳細の説明と改善を求めた要望書が出された。
- 懲戒処分が違法無効であることから、公立大学法人長野大学を相手に提訴
【今回の裁判の特徴的な争点】
- 懲戒権の濫用
- 懲戒処分が報復の意図で行われたことによる違法性
- 大学側の違法な減給により4名の教職員に経済的被害が生じたが大学は誰も責任をとっていない。
- 背景には大学の私物化という問題がある。
- 長野大学大学における法令違反・コンプライアンス違反(労基署からの是正勧告、競争入札がなされず特定の業者が優遇されている疑いなど)
(2)地域と大学を考える会の活動(京谷報告)
- 田中裁判を受けて、支援を継続するために市民の理解・協力を得て地域のなかに運動を広げる方針を確認した。
- 6月11日に市民集会を実施し、長野大学の理事長に要望書を提出したが、説明は拒否。さらに法的手段に訴える可能性があるので即刻やめるようにとの回答
- 公文書開示請求制度について情報開示を要求したが、ほとんど黒塗りの回答
- 2023年11月26日に開催された長野大学教育改革シンポジウムでも、改革について具体的な説明はなし。定員削減などの財政に関する問題もある。
- 公立化の大学運営は、教職員・学生・地域住民の意思を軽視=市と大学上層部が意思決定を行う非民主的な経営
- 教職員の労働環境の低下や教室等の設備の改善問題
- 地域の草の根から民主的な大学に変えていく必要性がある。
2.市民は長野大学問題をどう見ているか・感じているか。市民としてもっと知りたいこと、話し合いたいこと(地域の方々からのお話)
(1)市民Aさん
- 長野大学は地域の支援によって作られた大学であり、市民とともに活動している大学というイメージがある。それが公立化することによってさらに発展すると考えていた。しかし田中裁判を知り驚いた。市民として何が起こっているのかと思った。調査を求めたことにより懲戒をされたこともショックである。
- 上田市の教育を考える会のメンバーである。上田市の有識者会議が立ちあがった際に、その会議に仲間がいたので傍聴に参加したが、そこで教員評価・バウチャー制・学校選択などの議論がされており市民が求める学校についての議論ではなく、教育を考える会を立ち上げた。運動の結果これらの施策は却下されることになった。
- 長野大学問題も上田市の教育を考える会として見過ごせないので理事長に質問したが、「説明する予定はございません」という回答だった。もう一度質問したが、回答はずれており内容としても納得できるものではなかった。一番は大学に通っている学生が自由に学べることが重要だと思う。
- 友人に本日の集会のことを伝えたらメールが返ってきた。「長野大学の卒業生で大学のあり方に関心を持っていたが、長野大学でもっと学べることがあった。外部の思いも大事だが、在学生の思いも大事である」
(2)市民Bさん
- 長年小学校の教員をやっていて、現在は退職教職員の会の役員をしている。長野大学については、子どものときに本州大学ができるということを聞いたくらいだったが、地域の思いで開かれた大学だったということを最近知った。
- 公立大学になり、学費が下がり競争倍率が上がったくらいしか思っていなかったが、長野大学問題の学習会に参加する機会があった。そのときに不正な会計処理や裁判について聞いて驚いた。
- 元小学校教員として:学校は教育委員会や校長によるトップダウンの運営が一般的であるが、おかしなことがあれば校長に抗議をしたり、教職員組合として交渉したり、教育委員会と交渉するのが普通である。大学でも中から声を挙げているが、それを懲戒するというのは理解ができない。暴力的な大学運営が行われていると感じる。
- 一般市民として:公立化して上田市の大学になったのだから、今回のような不祥事が起きたときには、どんなことが起きたのかわかりやすく説明する義務と責任がある。それにもかかわらず公表も説明もしようとしないことについて、強い怒りを覚える。理工系学部には60億円がかかり、今後も維持管理費に税金が使われることになる。それについて説明がないことも考えられないことである。市民に対する情報公開と誠実な説明が必要ではないか。
- 長野大学が市民のための大学になるためには、公開講座や開放授業で市民が学ぶ機会を提供することや、市民運動に参加して大学がもっている知識を提供すること、学生が参加するような努力をしてほしい。誰でも学べる拠点となるような大学となってほしい。大学は当局や市の私物ではない。分散会では参加者が大いに疑問などを語ってほしい。
(3)市民Cさん
- ピースアクションうえだに参加している。理事長に対して出した質問状があるが、その経緯としては田中裁判のことを聞いても何もわからなかったことがある。なぜ大学がこんなことに懲戒処分ができるのかと思った。そのなかで一つだけ明らかにだめだと感じたのが、労働基準法で定めた限度を超えた懲戒処分を決定し、かつ慌ててあとで撤回して修正しているということがある。これは大学の理事会で協議をして法律に反する決定をしているということを意味している。理事会には弁護士もいる。その前には賞罰委員会で十分に協議をしたうえで法律違反の処分をしているということになる。質問状ではこの点を聞いたが、回答ではその点について何も言及がない。つまり法律違反への反省は大学には見られない。
- 回答には、市民がいろいろと言うと原告に不利になるという脅しも含まれている。長野大学はブラック大学寸前である。まだ寸前だといえるのは、このように集まって議論できる運動があるからである。これがなくなったらブラック大学完成で、学生にとっては最悪の不幸になる。
- 運動をさらに進めていくにあたって重要なことは二つある。一つは大学教員が、大学に対して真実を追究するような疑問をぶつけることである。もう一つは市民の責任の問題である。長野大学は上田市を設置者とする公立大学である。上田市は10万人以上の市民のことである。したがって市民一人一人が長野大学の設置者ということになる。それでいて市民が無関心でいてよいのか。市民としての務めも果たす必要がある。
- 本日参加してくれた方が、帰ってさまざまな話をしてくれるようになれば、まともな大学になれるのではないかと思う。みんなによる抵抗が続く限りはブラック大学は完成しないので、時間がかかっても頑張っていきたい。
Ⅱ.長野大学問題と地域の課題を語る分散会
以下は、各グループからの意見について発表された内容を列挙します。
討論テーマI:長野大学の現状について自分はどのように感じているか、それぞれの思いを自由に出し合ってみよう
【グループ1】
- 学内では懲戒処分が連続していて無言の圧力になっていた。
- 学内では懲戒処分に同情しているものばかりではない。上には逆らえない状況もあり、教職員は関わりたがらない。
- 学生は、このことをどう感じているのか?はじめから、その中に入ってくるので疑問を持たない可能性がある。
- 教職員組合:このような問題(訴訟問題等)を積極的に取り上げると、組合をやめたいという人がでてくる現状
- 上田市議会はどうしているのか?
- 非常勤講師をしているが情報が入ってこない。
【グループ2】
- かつて本州大学の頃、地域に開かれていて活気のある大学祭が行われていたことが印象に残っている。
- 地域の良い大学にして欲しいなと思った。
- これまで民主的な運営がされて来たと思われるが、だんだんトップダウンになってきており、今回の長野大学では、それがわずかな期間でやられているなと受け止めた。
- 佐久市からやってきたが、上田市民の方々や学生が、どう受け止めているのか?が気になっている。
- どんな経緯で理工学部を・・・という話が進んだのか?→ 運営費交付金が理系学部では大幅に増額するので、安易に飛びついた。
- 市議会はどうとらえているのか
【グループ3】
- 今日的な問題でもあり、大学の自治学問の自由が軽んじられている。
- 自由闊達な表現が自由に行使され、真理を自由に追求する場が大学である。
- 自由な場であって欲しい。
- 不正を告発して正そうとする態度は賞賛されこそあれ、懲罰の対象にすることはあり得ない。
- 不正には上田市もつながっているのではないか?
- これは大学の自治を脅かすものであり、この問題は大きく広げて議論をしていく必要がある。
【グループ4】
- 和気あいあいと話ができた。
- 本件の他の先生、学生たちにどう伝わっているのか?
- 長野大学問題を初めて知りました。
- なぜこんな大学に?学生を馬鹿にしている。
【グループ5】
- 公立化される前の長野大学のイメージは、のどかな大学・地域に開かれている大学・ゼミや合宿にも参加させてくれる(7年間聴講生として参加)
- 大学生が地域に根差していて、イベントなどの企画をやっているのが羨ましい(他大学の大学生)
- 公立化されてから、学生を見ていない。上層部からの圧力がある。
- 学生と教員がとても近い感じで、みんなで作り上げてきた大学
- 大学でなく企業になってきた。
- 政治的介入が大きい。理事長からの回答は政治家と同じ。
【グループ6】
- 田中・京谷報告を聴くと、正義はどうなっているのかと思う。
- 起こっていることが発信されないのがまずい。「地域と大学を考える会」の活動は重要
- 学生減少の中で学部新設なんていいのかー理系で軍事研究に利用されてしまうのではないか。
- 「ルポ大学崩壊」(田中圭太郎)を読んだが、各地の大学で行っていることが長野大学でも行っている。
【グループ7】
- とんでもないところに来た。理工系学部ができると他にお金が使えない。施設整備のお金の出しどころが違う。
- もともとは関心が無かったが、「上田の教育を考える会」などを通して関心を持つようになった。
- 話を聞いて驚いた。教員・学生の力になりたい。税金の一部が使われていく。
- 教職員組合でも変えていく。
- 公立大学だと税金が使われている。行政に市民がもっと声をあげていく。
- 長野大学で教えていたが当時は私学であった。福祉の枠で入ってきた学生が入りにくくなった。ハンデを持った学生が入りにくくなった。それは公平なのか。
- 社会福祉学部、福祉の世界では人権を守っていく、そんな大学で不正などとんでもない。
- 長野大学は知っていても、実際は良く知らない。
- 地元の子供たちの大きな進路の一つなのに、公立化してなぜこんなことが起きているのか。
- 長年に渡って非常勤をしたが、自由大学の流れを汲んだ歴史のある長野大学、そういう歴史を前に進めていくと思ったら、逆方向に進んでいる。地域の人たち、学生、教員が発言する必要がある。
- 学生は、まず知らない。ブラックボックス化している。
- 学生から意見を届けようとしたら、「面倒になるからやめろ」と言われた。学生が知らないのはおかしい(長野大学学生)。
- 学生が、この場に来ないのは社会的にめんどうなことに関わりたくないという考えなのではないか。
- 情報の統制が行われている。大学内では討論が行われない。
- 設備がダメ
- 今回の問題は大学の学びの場所、大学の自治がこわされている。学びたいという権利を崩されている。すごく危機感を持つ。
- 大学間の交流が無い。横のつながりがない。単独じゃ勝てない。
- 大学内からパワーが出てくれば、地域で支えていく。
【グループ8】
- なぜ市議会が動かないのか?
- 理系学部の設置は大学生や教職員から出てきたのか?国などからの要請なのか?→ 地方交付税交付金の運営費交付金が増えるため上田市が考えたこと
- かつては学生は愛校心が強かったようであるが今はどうなのか?
【グループ10】
- 私学から公立になってどのように変わったのか知りたい。
- 田中裁判は時間がかかっても勝つのではないかと思うが、それで良かった、で終わらないで、そこからどうするかが重要だと思う。
- 学生たちの学費も関係しているのだから学生たちも問題を知れば怒るのではないか、学生たちはどう思っているのか?
- 市議会議員が、なぜ、一人もこの問題について発言しないのかなぜか。
- 市議会の質問や審議になれば市民も傍聴できるのではないか。
討論テーマII:今後、長野大学はどんな大学であってほしいか、どんな大学であるべきか、それぞれの意見を自由に出し合ってみよう
【グループ1】
- どうすれば良い大学になるか、単純には言えない。
- 正義感とかだけで解決する問題ではない。
- 自由に当事者が言えない状況を変えていく。
- 理事会のあり方を変えていく
- 市議会がこの問題に関わらないおはおかしい。個々の議員はもっと具体的に関わるように働きかけていきたい。
- 理工学部の話について、市民にも学内にも具体的に説明する場をする作るべきだ。
- 大学の中で起きていることを変えれば大学は良くなる。
【グループ2】
- 孫が受験するなら勧められるような大学になって欲しい。
- 長大の学生さんが社会へ出てイキイキと活躍する姿が見えるとよいな。
- 地域の皆さんが評価しているのだから、そういった大学であり続けて欲しい。
- 塩田に限らず、上田全域で皆さんに受け入れられる大学に。
- 「ここに来れば民主主義が学べる」というのが、生き残り策であると思う。
- 市民が議員を動かして、それをやって欲しいーーーというのが、佐久市民からの願いである。
【グループ3】
- この問題についていえば、広く問題の広報が学生や教職員にもなされていくこと
- 市議会を動かすこと、議員がこの問題を議会で取り上げない理由は全く理解不能
- 理事会へのメンバーへのアクセスなども考えてよいかと
- 万事公論に決すべし
- 自分たちで考えて、自分たちで作れる大学になっていったらいいです。
- 外から応援していきます。
【グループ4】
- 公立化することで、良くなかったこともあるとは。
- お金は出しても口は出すな
- 閉塞感を無くすにはどうすれば良いか?
- 人間は間違えを犯すものであるが、それを直していく謙虚さが必要。
- かつての長大は居心地がよかった。
【グループ5】
- 今日の会に現場の先生が来ていないのが残念、学生にももっと来て欲しかった。
- 市民としてこれから行動していかなければならないと思った。
- ここで繋がった皆さんとまた交流していきたい。
- 公立化以前は素晴らしい先生との出会いがあった。
- 市民に説明をきちんとすべき方向で、私たちも行動したい。
【グループ6】
- 理工系なんてできるのか。東大、東工大の真似して、本当に教員、学生を集められるのか。
- 文科省の言うなりではなく、地域と協働でここにしかないもの、ここでしかできない大学を作って欲しい。
- 地域貢献度1位の特徴を活かして学生も教員も、もっと地域に出ていくようにしたい。
【グループ7】
- 学生が大学の運営に入りたい(将来の大学の計画に関わりたい)
- 学生の意見を聞いて欲しい。
- 障害児教育、大学外の人間も一緒に学ぶことができる大学、お互いに学びあえる大学
- 基本から練り直さないといけない。
- 理工系学部ができようとする経緯がおかしい。
- 環境ツーリズムなどは特色ある学部なのに、なぜ統合するのか?
- 純粋に学びたいことを学べる大学へ
- 学生が第1になっていない。
- 学生が立ち上がることが必要、学生の声が大きくならないと市民につながらない。
- ただし、学生を一人ぼっちにはしない。
- 学生の学びたいという権利も崩されている。もう大学ではない。
- 学生を一人ぼっちにしないために、市民とつながるか、市民が学生を支えていく仕組みが大事
【グループ8】
- 地域に密着して地域に目をふけるような大学になって欲しい。
- 出前の授業を擦る等市民に対して開かれた大学になって欲しい。
- 長野大学の学生と接していると頑張っているので応援していきたい。
【グループ10】
- 理工系学部ができるようだが、その内容も何も知る機会がないので、もっと透明化してもらいたい。
- 大学の教員・職員の人たちがどう考えているのだろうか。
- 組合はどうしているのか? これから組合が大事になってくる。